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憧れるけど踏み切れない…【読クソ完走文】自作の小屋で暮らそう/高村 友也

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40歳を過ぎて来ると、あらためて自分の人生について考えるようになる。

残り半分の人生をどうするかという課題。健康寿命を考えるともっと少ないか。

若い時はそれこそいろんなことに手を出して広く浅く経験を積むのが良いと思う。

だけど、中年になるともはや自分の好きなことしかしたくなくなる。

というか、興味あることにしか全力を注げないし続かない。

そういう意味で、本書「自作の小屋で暮らそう」はとても魅力的な内容だ。

 

Bライフとは

著者高村氏は「Bライフ」を提唱し、必要最低限の生活を実現させた。

「B」にはあまり意味がないらしく、「AというよりBだ」くらいのニュアンスだそう。

一番しっくりくるのはBASICのBだそうな。このあたりから良い感じの適当さが伺える。

Bライフはサバイバルでも自給自足でもスローライフでもミニマリストでもない。

生きるために最低限必要な生活空間を低予算、独力で構築する。

それまでの道のりが本書に記されている。

 

生活費は月2万円

Bライフで最も魅力的なのは生活費が非常に抑えられていることだ。

住宅ローンに縛られた生活を強いられている身としてはなんとも羨ましい。

日本で暮らすとなると住居にお金が掛かる。利便性を考えるとなおさら。

そんなこんなで著者が行き着いたのが自作の小屋というわけだ。

郊外の雑木林に安い土地を購入し、そこに小屋を建てる。

水は近くの川や湧き水を汲みに行き、トイレはコンポストトイレ(水洗ではなく微生物の力で分解する)。

さすがに電気は引いてきたみたいだが、ガスはカセットコンロを使っている。

他にもソーラーパネルを使って発電したり、冷蔵設備を作ったりと徹底して生活費を抑えている。

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▲今思うとカンボジアの人々はBライフだったのかもしれない。

 

結局、何が目的なのさ?

著者のBライフを読む限り、それが決してお手軽なものとは思えない。

現代の都市生活に慣れた我々には不便に思うことも多いだろう。

試行錯誤や創意工夫、時には法律や制度も把握し利用することが必要だ。

つまり、そこそこ面倒くさい

しかし、そこまでして著者はどうしてBライフにこだわるのか。

 

それは、ゴロゴロするためだ。

 

日がな一日、読書をしたり散歩をしたり、寝たい時に寝て起きたい時に起きる。

ほんの少し収入を得て残りは好きに過ごす。何事にも縛られず精神的に身軽な状態。

これこそ、まさに自由。著者はそう言う。

 

でもこの先どうなるの?

自由を享受できるのはわかった。正直言って羨ましい。

だけど、同時にこの先どうなるのだろうということが頭に浮かんでくる。

結婚はしないのか?子供はいないのか?親の面倒は?病気になったら?

上記はかろうじてクリアできたとしても、自分が老いた時はどうなるのだろう。

これは「年収90万円で東京ハッピーライフ」を読んだ時にも思ったことだが、自分ひとりで人生を過ごすことが前提にある気がする。

まさに「咳をしても一人」状態だ。

結婚し子供3人を育て親の面倒も見ようという僕にとって、Bライフ実現は甚だ難しい。

海外でも似たようなことを実践した人がいる。「ぼくはお金を使わずに生きることにした」の著者マーク・ボイル氏だ。

この本を読んだ時も独り身じゃないと無理だなと思った。

もっとも彼は期限付きのチャレンジだったわけだが、お金を掛けずに生活するという意味ではBライフに近い。

Bライフはやるべきことが多い。安定するまでは大変だし知恵や知識も必要だ。

しかし生活が安定してしまった後は何をしたらいいのだろう。

おそらくこういう発想自体が現代の消費社会に縛られた思考なのだと思う。

とはいえ、この先を想像できないのも確かだ。きっと身近にそういう人がいれば想像できるのかもな。

だからこそ、著者の今後の動向は大変気になるところだ。

 

「自由」ってそういうことなのか

今、僕自身の生活を顧みた時、家のことや家族のことがあるからBライフを実践することはできない。

自由を享受するBライフができない、つまりこれは「自由」ではないということだ。

資本主義で近代国家の日本において、僕は何かに隷属した非自由民ということになる。

いや、もちろん家族を見放し家を投げうって独り生きていくというのも自由だ。

だけど、さすがにそこまで踏み出すことはできない。己の自由と今の立場を天秤にかけるとやはり後者に重みがある。

っていうか、今の状況も結構気に入ってるし

 

とはいえ、Bライフ的な考え方にはとても共感を覚える。

必要最低限を見極めてシンプルに生きること。そして空いた時間に好きなことをすること。

何かに縛られた現在社会ではあるけれど、そういう生活を目指して行きたい。

と、思わされる内容だった。