足裏が完全に崩壊した話 ~ 京都高雄マウンテンマラソン 2018 完走の記録
違和感を覚えたのは10キロ標識の少し手前。左足が何かを踏んでる感覚。チラリと見下ろす。
すると小指の横に羽のようなものが生えていた。その瞬間に悟る…もはや手遅れだ。
日本一ハードなハーフマラソン
12月15日、京都高雄マウンテンマラソンに参加した。当日は早朝に雨が降り路面が濡れていて、山の方は雪だったようで薄っすら白くなっている。
今回のコース、「日本一ハードなハーフマラソン」というふれこみだけあって坂道がすごい。
普段ドライブウェイとして使われている道路なので、全面舗装はされているけども平坦な区間がほぼほぼない。
高低差184メートル、累積標高694メートル…っていうのがピンとこないけど、走ってわかった。これはなかなかの坂道だ。
公式に高低差表が見当たらなかったのだけど、標識には記載があったので載せておく。
▲確かにこれ見たらエントリーするの躊躇するよな…
初めてのマラソン参加にこの大会を選んで大変な目にあった人がいた、という話をエイドスタッフのおじさんから聞いた。
確かに、最初にこんなコース走ったらトラウマになるかもな。初心者の方はやめておいた方がいいかもしれない。
けど、ここを完走できたらどんなハーフマラソンでも怖くはない。そんなコースだ。
▲コースは山の中。この季節にこの場所は寒い。スタート地点に用意された焚火がうれしい。
▲おぜんざいも無料で振る舞われていた。スタートまでここで暖を取る。
▲9:30から開会式が行われた。寒いので皆焚火を囲んでの参加。
京都・高雄と台湾・高雄が同じ地名ということで、台湾から招待選手が数人来ていて紹介されていた。あと芸人の高山トモヒロ氏もゲストランナーで走るとのこと。
さて、今回の目標は「歩かない」ことに設定した。僕は上り坂が苦手だ。過去の宇治川マラソンでも後半の坂で歩いてしまっている。
歩くのがダメなわけじゃないけど、坂に負けて歩いてしまうと、僕の場合そこで何かがプッツリ切れてしまう。
気持ちを持ち続けるためにも今回は歩かないことを固く誓う。
▲裸足で参加。これが最後の裸足ランになるとはこの時は思いもしなかった…
気温も低いのでかなりウェアを着こんでる人も見かけたけど、僕は半袖短パン裸足のスタイル。
確かに走るまでは寒いけど、走ってたら暑くなるしダウンベストとか着過ぎじゃないかと思うんだけど、それはひとそれぞれか。
▲後ろの方に並んだつもりだったけどスタートラインはすぐそこ。
上りより長い下りが鬼門
午前10時、京都高雄マウンテンマラソンがスタートした。スタート直後から緩やかな上りで小さなアップダウンがある。
最初の折り返しは1キロもないので、すぐに先頭の選手とすれ違うことになる。
▲スタートからすぐに2回折り返すので先行のランナーとすれ違う。
この時、こちらが上りで向こうが下りということもあったのだけど、スロースタートの自分に対して先頭集団があまりに速く、ちょっと焦ってしまった。
もしかして上りにビビってペースが遅いんじゃあないか…そう思ったのだ。そして上りのロスを下りで取り返すため、遠慮なく駆け下りる。
だけど、この下りの無茶な走りが足裏に計り知れないダメージを与えていた。寒さのあまり足裏がマヒしていた僕はそのことに気付かなかったのだ。
折り返した後、スタート地点を通り過ぎて次の折り返し地点へ。ここがちょうどスタートから3キロ。
ここまではウォーミングアップでここからが本当のスタートだと思って気合いを入れる。
▲2つ目の折り返しである高雄口。ここから18キロのコースを走ると考えた。
▲ワン遊ランドを過ぎての長い坂道。何気にゲストランナーの高山氏が写ってる。
もう一度スタート地点を通り過ぎ、今度は嵐山・清滝口まで約10キロを走る。
ここから続く長い上りを黙々と走る。この区間はキロペース6:39だったのでかなり遅い。
それでも淡々と上り続ける。遅いけど足は元気だし息も荒くない。まだまだ大丈夫。
▲向こうの山が白い。でも天気いい。
ピークを迎えると次は延々と下り坂が続く。重力に逆らわず力を抜いて転がり走る。
この時は足裏のことなど気にならないくらい快調に飛ばしていた。
そしてまだ写真を撮れるくらいの余裕がある。
▲長い上りが終わったら今度は長い下り。基本この繰り返し。
▲駆け下りる感じは爽快だけど、足裏への負担は半端ない。
「京都を走るマラソンはあっても、京都を見下ろすのはこの大会だけ」とよくわからないアピールがなされていたのを思い出す。
高雄マラソンはドライブウェイを走るので沿道での応援がない。スタート付近で地元ボランティアの方々が応援してくれていたが、道中はとても静かだ。
沿道の応援でパワーをもらうタイプの人はちょっとつらいかもしれない。そんなことを思いながら黙々と走り続ける。
▲京都市街を一望するパノラマ。景色も楽しみながら走って!と言われてたけど…しんどいわ!
途中までは自分でも良いペースできているなという感触があった。もちろん上りは遅いけど歩かず走れているし、下りもそこそこのペースで走れてるし…
と思ったところで足裏へのダメージが気になった。思っていた以上に下りがきつくて長い。
大丈夫なの?足裏…
足裏はこうして崩壊した
そして冒頭の文章である。10キロ地点で訪れた違和感。足裏からはみ出す何か。ヤバい。調子に乗りすぎた。
もうこれは、明らかに足裏の皮がめくれてペロン状態だ。
幸か不幸かあまり痛みは感じない。寒さでマヒしてるのと、たぶん脳内ナントカ分泌で軽減されているのだろう。
もうすぐ中間地点だ。エイドで足裏を確認して棄権するかどうかの判断をしよう…という考えが頭をよぎる。
だけど、結局エイドでは止まらずポカリを一口飲んでそのまま走り抜けた。立ち止まって足裏を見たら、もはや走ることが出来ないと思ったからだ。嗚呼、おとろしい。
清滝口で折り返し、長い坂道を上りながら、ふと足元をみるとペロンが無くなっている。あれ?もしかして落ち葉が付いてただけなのかな。気のせいだったのかな?
そんな思い違いをしていたら、今度は右足からペロンが出てきた。
思い違いな訳がない。左足のペロンはコースのどこかではがれ落ちたのだろう。さよなら、僕の足裏。そしてこんにちは、右のペロン。
もうここまで来たら気にしない。これは落ち葉だ。落ち葉が足裏に張り付いてるんだ。「闘将!!拉麵男」に出てきた筋肉拳バンボロも背中にずっと葉っぱ付けてたしな。
▲あと6キロ。僕の足裏はとっくに限界超えてますですはい。
そんな足裏問題とは別に、折り返して清滝からの上りがエグい。上は見ず、足元だけを見つめて無心で走る。心折れそうになりつつも、かろうじて上り切った。
上り切ったら次にあるのは長い下り。小指側に負担を掛けないため、母指球でブレーキをかけながら控えめに走る。
結果、この走法で右母指球と親指に大きな血豆ができることになる。
下り切ったらまた上り。先ほどの上りも含め、後半はキロ7:50と目も当てられないペース。でも歩かない。歩いてるランナーと同じペースだけど歩かない。
歩いたら足裏だけでなく心まで崩壊する。そんな精神状態だった。
だけど、下りは5:00くらいのペースで走った。自分にしたらそこそこのペースだ。足裏へさらなる負担を与える不安はあったけど、ここまで来たら全力だ。
といえば聞こえがいいけど、はっきり言ってヤケクソになっていたと思う。
ゴール、そしてこれからのこと
2時間3分11秒、なんとかゴールにたどり着いた。
ゴールで待っているスタッフの方々に「まあ!裸足!大丈夫?」みたいなお声掛けをたくさん頂いたのだが、全然大丈夫じゃあない。
結果、2時間を切れなかったのは残念だけど、目標にしていた「歩かない」を達成できたのは自信になった。
そして思っていたより自分が上りを走れたことに気付けてそれも収穫だった。
▲大丈夫じゃないけど、とりあえず完走。
▲もう一杯、おぜんざいを頂いてからそそくさと帰る。
ただ、得たものよりも失ったものの方が大きかった。皮がめくれた状態で10キロ以上走ったことにより、足裏が完全に崩壊したのだ。
これまで何度か足裏を“派手にやらかした”ことがあったけど、その状態が軽傷に思えるくらい、それはそれは見事にやらかした。
なんとか家まで帰り着いたが、シャワーを浴びた時に地獄の苦しみを味わうこととなる。
そんな様子を見た家族からネガティブな意味でもポジティブな意味でも裸足で走ることへの猛反発があり、僕自身、今後の走り方を見直すことにした。
自分の性格上、どうしても無理をする傾向がある。挑戦を通り越して無茶、無謀なところだ。そして無計画なところも付け加えたい。
今回の敗因は寒さで足裏の感覚がなくなるリスクと、急な下りで足裏に負担が掛かるというリスクがあるにも関わらず裸足で走ったことだ。
おそらくきっと、これからも裸足で走ればまた怪我をすることになるだろう。
怪我をしてしばらく走れないのは正直、不本意だ。そして家族にも大きな迷惑を掛けることになる。今回がまさにそうだった。
そんな考えもあって、裸足で大会に出るのはこれを最後に無期限停止にしようと思っている。
何にせよ、足裏はまだちゃんと歩けないほどに痛いのだ。