右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

第4回 奥比叡・仰木棚田トレイルラン 完走の記録

f:id:iparappa:20180723230010j:plain

5月に予定していた鯖街道をキャンセルしてからというもの、張りつめていた何かが緩んだみたいで、走る目的が見えなくなるような、そんな時期が続いていた。

でも、この状態のままでは良くないし、「自分の機嫌は自分でとる」って、とあるお笑い芸人も言ってたし、なんとかしなきゃと思ってエントリーしたのが本大会「奥比叡・仰木棚田トレイルラン」だ。

実のところ、僕はこの第1回大会に出場している。途中、豪快に転び、買ったばかりのコンプレッションタイツは破けるわ、額から血が出るわ、怪我と暑さと自分に負けた思い出深い大会なのだ。

f:id:iparappa:20180723230153j:plain
▲会場までは駅から徒歩30分。送迎バスに乗らなかったことを後悔するくらい良い天気!

大会の数日前、王将で餃子の持ち帰りを待っている時、ばったり友人のT氏に会って、彼と彼の友達数人も出場するということを知った。

T氏は僕が比叡山を走った時にゴールで迎えてくれた同級生だ。同じく福知山マラソンですれ違った、これまた同級生のW氏も参加とのこと。

いつも独り行動の僕だけど、大会で知っている人がいるのは頼もしい。二人とも僕よりタイムは格段に速いしエントリーした距離も違うけど、走りを共有できるのって心強い。

f:id:iparappa:20180723230048j:plain▲T氏(左)とW氏(右)。小学校からの同級生が皆ワラーチという偶然!

本大会を走るにあたり、僕が目標に掲げたのは「裸足での完走」。トレイルの大会で裸足出場を決めたのは初めてだ。

今回、28キロと16キロのコースが用意されていたけど、そこはヒヨって16キロにエントリー。そしてハイドレーションに1リットル、ボトルに1リットルの水、小さいポカリにパウチのソルティライチ、さらにジェル3つを準備。

前回、最後の5キロで水分がなくなり、灼熱の中を無給水で走る地獄の思いをしていたので、こちらもヒヨって過剰な水分を背負うことに。

距離的にも準備的にも超守備的な体制で臨んだわけだけど、おかげで多少余裕を持って完走することができた。そう、足元以外は…

f:id:iparappa:20180723230849j:plain▲シネマティック・ベアフット (撮影:T氏)

f:id:iparappa:20180725105737j:plain
▲今回のコースマップ。一部変更があって28キロが24キロに。

奥比叡・仰木棚田トレイル大会。トレイルとはいうものの、野道はあまり多くない。体感的には30%くらいか。主にあぜ道や林道、アスファルトなどが残り70%を占める。

比較的走りやすい路面が多いし、厳しい上りも16キロだと1、2か所。制限時間も十分だし、初心者に優しいコースだと思う。裸足には優しくなかったけど…ボソ

一番の問題はこの暑さだ。案の定、大会当日も炎天下。いくら山の中とて、600~700mの標高だったら涼しくなることはない。ということは、前の週に大文字山へ登って検証済みだ。

f:id:iparappa:20180723230213j:plain

▲「鉄板がお熱くなってますのでお気をつけ下さい」レベルのアスファルト

スタートは10時。1組目でW氏が行く。その後、3組でT氏とその友人。彼らを見送り、僕は10時15分、4組目でスタートを切った。

f:id:iparappa:20180723230227j:plain
▲スタート直後は仰木の里住宅街を走る。緩やかな登り。

連日の熱中症報道もあり、とくに気をつけた暑さ対策。今回は試験的に「吸水タオル」を導入してみた。タオルをしぼって身体に水をかける作戦だ。

本当はマラソンで使う給水スポンジを使いたかったんだけど、50個セットなどのロット販売しか見つけられずタオルに変更。ホームセンターで見かけた洗車用のスポンジでも良かったのかな…。

しかし、このタオル大作戦、思いのほか有効だった。

f:id:iparappa:20180723230237j:plain
▲暑さ対策のため近所のスーパーで手に入れた吸水タオル。100円也。

本大会は棚田周辺を走ることから農業用水路がある。つまり水が豊富にあるのだ!

ま、溝に流れているのは生活用水なので、そのあたりは割り切らなければならないのだけど…。

スタート直後の住宅街は午前中にも関わらずチンチンに熱せられたアスファルト。「てめえらの血は何色だー!」と叫びたくなる気持ちを抑え (※北斗の拳 63話参照)、足に水をかけつつ進んでいく。さっそくタオルが役に立ったぜ。

f:id:iparappa:20180723230255j:plain
▲最初の住宅街を抜けるとあぜ道を通って山へ向かう。暑い。

しばらくいくと小川を渡ってあぜ道へ。直射日光がジリジリと照りつける。もうこのあたりからタオルを水に浸して身体に掛け続ける。

スタートの雰囲気に押されてオーバーペースで飛び出したのだろう、数名のランナーが息を切らせて早々に歩いていた。それほどまでに暑いのだ。

f:id:iparappa:20180723230304j:plain
▲山に入ると木陰があるものの、気温は高いし暑いもんは暑い。

田んぼを抜けると山道へ。この辺りは無理をせず前の人に送れないようペースを保ちながら歩いていく。

しかし、小石が多くかなり足裏にくる…。これまでのアスファルトもそこそこ荒れていたから、今回の路面、裸足に優しいとは言えない。

f:id:iparappa:20180723230314j:plain
▲山道はぬかるんだところも。泥が足裏にやさしい。

先日の大雨の影響か、序盤にぬかるんだところが多かった。僕は逆に助かったけど。足指の間から泥がにゅるっと出るのがこそばゆい。

だけど、基本的には砂利道ベースの山道だ。いかるがの里ハーフを走った時以上に裸足に適さないコースだと薄々感じ始める。

f:id:iparappa:20180723230322j:plain
▲登山道をしばらく進むと丸太階段ゾーンへ。

f:id:iparappa:20180725104010p:plain
▲16キロコースの高低差。

ショート16キロコースはスタートから第1エイドまでが登りのピーク。とくに4キロ越えたあたりから始まる丸太階段は結構キツい。登りの途中、何人も脇にそれて休憩していた。

だけどここを過ぎれば第1エイドまではほぼ下り。その時を見据えて黙々と登り続ける。

f:id:iparappa:20180723230336j:plain
▲結構のぼる。今回16キロのコースはここが正念場。

階段が終われば山道を下るわけだけど、下りの衝撃もあって足裏にビリビリと響く。下りきったら林道に出る。そこで先行していたT氏と合い、もうひとりの友人を待って3人が合流した。

走っているテンションだからか、途中で知り合いに会うと写真を撮りたくなるのは何故でしょうね。でもカメラに向かってポーズを取ると元気が出てくるから不思議。

f:id:iparappa:20180723230353j:plain
▲ひと山越えて第1エイドへ向かう林道を走る。もはやそこそこ足裏がやばい。

とはいうものの、すでに足裏は限界に近かった。写真の路面はまだ大丈夫だったけど、この先は小石と砂利の林道で、もはや走るのは無理。

二人の後方を歩いて付いて行くけど、実際はどんどん離され、さらに後方のランナーにもスイスイと抜かれていく。

小石を踏んだ痛みが足裏全体に広がり歩くことも厳しい状態のまま、ここでやめるかどうか何度も自問自答する。

本当に後悔しないか、まだ続けるべきじゃないのか…。

荒ぶって裸足で飛び出したわりに、たった6キロでギブアップなんて正直カッコ悪い。(誰も気にしてないけど)

 吟味に吟味を重ねた結果、第1エイドが見えた瞬間、リュックからおもむろにゼロシューズを取り出し、いそいそと両足に装着した。

さよなら、裸足。

f:id:iparappa:20180723230443j:plain
▲裸足、最後の勇姿。しょっぱい結果でした。

早々に目標を失ったので、とにかく気持ちを切り替える。距離も短い、タイムも気にしない。となれば後は楽しく走るだけ!

吹っ切れたついでにエイドのキュウリをバリバリ食う。トマトも食う。夏野菜食べると夏バテしないって言うしな。今は関係ないけど!

そういえばエイドでは水分補給に結構な行列が出来ていた。時間を気にする人はちょっとイライラしたかも知れない。

f:id:iparappa:20180723230430j:plain
▲標高600m、第1エイドから琵琶湖を臨むビュースポット。

絶景をバックにT氏と写真を撮り合いひとしきりはしゃいだ後、引き続き3人揃ってエイドを出発。第2エイドまでは山中、アップダウンを繰り返す。

ところどころ林道を走るけど、この辺りはやっとトレイルランっぽいエリアだ。しかも比叡山を縦走した時のコースでもあるから馴染みもある。

f:id:iparappa:20180723230458j:plain
▲看板とTシャツの色がシンクロニシティ!って何か既視感あるな、この写真。

標高681mの大尾山、本大会で一番高いところだ。ロングコースはもうひと山越えなきゃいけないけど、ショートコースは残り下りがメイン。

暑いのは暑いけど、気持ち的にも体力的にも水分的にもまだ余裕がある。思えばこんなに元気なトレイルは初めてかも。

f:id:iparappa:20180723230509j:plain
▲第2エイドに到着。ここでも水分補給に長い行列。

大尾山からはそこそこ急な下りを行く。それほど長くない距離を進んで車道に出た所が第2エイドだ。

空になったポカリのペットボトルに水を入れておく。これはかぶる用。もちろんタオルにも水を含ませておく。

T氏とその友人はロングなのでここでお別れ。僕はこのまま車道を下って次のエイドへ向かう。

f:id:iparappa:20180723230526j:plain
▲第2エイドを過ぎたら、あとは下るだけ!ひゃっほい!

景色を愛でる余裕もありつつアスファルトを下っていく。ワラーチを履いているとは言え、前半の足裏消耗で接地の衝撃がひびく。

転がるように走り下ることはできなかったけど、この暑さを考えると、それくらいのペースが良かったのかもしれない。

f:id:iparappa:20180723230544j:plain
▲林道から山へ入る。待望の沢がある!

丸太階段あたりから水流がなかったのでそろそろ川に浸かりたいと思っていた時に現れた沢。

ちょっとコースアウトして足首までつかりクールダウン。もちろんジャブジャブと顔も洗う。

サンダル系だとそのまま水に突っ込む事が出来るから、この爽快感は夏トレイルの醍醐味だ。

冷たい水でリフレッシュ、沢に沿って湿ったトレイルを抜けると次のエイドに到着。

f:id:iparappa:20180723230607j:plain
▲あっという間に第3エイドの滝寺に到着。

この次の第4エイドまで3.5キロということなので、ここは水分補給だけにして出発する。

後半は意図的なのかエイド間の距離が短く参加者に優しいコース設計だ。

引き続き人里へ向かって下って行く。

f:id:iparappa:20180723230617j:plain
▲ここ、ここ!忘れもしない、第1回大会ですっ転んだ場所だ。今回は華麗にクリア。

f:id:iparappa:20180723230631j:plain
▲しばらく続く林道を下る。

第3エイドからは、ほぼ舗装路だ。道幅は車1台分くらいの狭さだけど走りやすい。

どれくらい走ったか、しだいに木陰がなくなり、とうとう日差しを浴びながら走ることに。

f:id:iparappa:20180723230643j:plain
▲林道を抜けると棚田に出る。開けた景色で気分的にも明るくなる。でもあつい。

f:id:iparappa:20180723230651j:plain
▲第4エイドは人もまばら。ここでもコースが分かれる。

最後のエイドに着いたのは13時を少し過ぎたあたり。

頭から水をかけてもらい、残り1.7キロ走り抜けるために最後の補給をする。

f:id:iparappa:20180723230728j:plain
▲キュウリやトマトがうまい!思わずプチトマトを10個ほど食べてしまった。昼飯か!

f:id:iparappa:20180723230738j:plain
▲あとは田んぼの間を走り抜ければゴール。ご覧の通り、日陰がない…。

この最後の1マイル、午後の日差しが容赦なく照りつける区間は結構キツい。

とくにロングコースは灼熱区間が5キロ続く。本大会で最も厳しいところかもしれない。

あと少し奮い立たせて、走る。スパートをかけて数人のランナーをかわす。

でもちょっとスパートが早かったみたいで、なかなかゴールが見えてこない。

胸ポケットに入れたポカリのペットボトルの水を一気に浴びる。

もうヘロヘロだ。グダグダな走りにワラーチをパタパタいわせて最後の坂を登りきった。

そして3時間5分26秒、無事にゴール。キロペース11分35秒だから3年前の記録より遅い。

f:id:iparappa:20180723230746j:plain
▲怪我もせず完走できたので良しとする。

f:id:iparappa:20180723230758j:plain
▲仰木名物の梅しそジュース!激ウマ!ご厚意に甘えておかわり頂きました。

f:id:iparappa:20180723230806j:plain
▲走り終えた後に木陰でかき氷。なんやもう最高やないか。

ピーチシロップのかき氷をムシャムシャ食べながら今日の走りを思い返す。

何にしても今の裸足スキルで対応できない路面が多すぎだ。これって慣れるもんなのか…?

裸足で富士山登ったり、ウン10キロ走ったりする人って、あらためてスゲーなと思う。

自分は全然だということがわかったし、目標とすべきこともうっすら見えてきた気がする。

f:id:iparappa:20180723230814j:plain
▲裸足完走はクリアできなかったけど、いろいろ思うところがあった。

ひと息ついた後、着替えて24キロ組を待つ。こうして誰かのゴールを待つのは初めてかも。

友人を待ってる間、全然知らない人がゴールするのを出迎え応援していたけど、なんか我が事のように達成感を感じるもんだな。大袈裟だけど。

W氏に続いてT氏がゴール。友人1人がDNFだったけど、この暑さの中、皆無事に戻って来れたことが何より。

f:id:iparappa:20180723230825j:plain

これまでトレイルの大会に出る時は距離を求めたり、タイムを気にしたり、挑戦することに重きをおいてきた。

今回、16キロという初のショートトレイルで、走りを旅に比喩されるようなドラマはなかったのだけど、楽しむことができたのは間違いない。

大会に出場した時、これまでとは異なる楽しみ方に気付けたのが今回の収穫だ。

奥比叡・仰木棚田トレイルラン、充実感のある大会でした。