右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】太陽と乙女/森見登美彦

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 僕は京都生まれの京都育ちなので京都のことは好きだけど、どちらかというと地元愛的な感じなので、京都好きを自称する人ほど京都好きではないと思う。

京都に住んでるから京都に詳しいかと言うと全然知らないことの方が多くて、もはや京都通を自称する観光客に京都のことを聞く始末。

まぁ自分が住んでいるところなんてそういうもんなんだろうと思うけど、本書の著者、森見登美彦氏も同じように思っていたのは意外だった。

森見氏の作品を読んだのは『夜は短し歩けよ乙女』が初めて。タイトルの小気味良さと中村佑介氏のイラストが僕の琴線をかき鳴らし、少し立ち読んだ時に飛び込んできた浪漫文章!

これはもうすごいものを見つけてしまった!と夢中で読んでみたものの、お話があまりに荒唐無稽な展開に独特の言い回し、僕のイマジネーションが世界観についていかず不思議体験のまま読了したと記憶している。

そんな(どんな?)著者のエッセイである本書、「寝る前にチョロっと読める」をコンセプトに森見氏自身のことがいい具合の文章にまとまって書かれている。そしてコンセプト通り寝る前に読んだりもしたけど、面白すぎて結局持ち歩くことになってしまった。

森見氏の文章はとてもユーモアがある。落ち着いたテンションでリズムよく話が進んでいくかと思えば突然大袈裟な表現が立ち回る。これには思わずくすりと笑ってしまう。

実際、森見氏に会ったことも見たことも声を聞いたこともないけれど、こんな「文章」が服を着て歩いてるような人なんだなぁとは想像できるくらいその人を表してると感じた。

なんか森見賛歌みたいになってしまったけど、つまりは僕もこういった文章を書きたいわけである。←「である」とか、こういう文章の書き方からすでに模倣し始めている。

 

話は京都に戻る。森見氏が描く舞台は本人曰く「妄想京都」だそう。冒頭にも触れたけど、森見氏もむちゃくちゃ京都通というわけではなく、自身が経験した京都生活を膨らませて作品を書いているそうな。

思うに京都は妄想しやすい場所なのかもしれない。歴史もあるし文化もあるし美味しいパン屋もたくさんあるし!

僕はたまに出張で地方へ行くことがあるけど、見所って距離が離れて点在していることが多い。でも京都はすごくこじんまりしていて、さっと移動できる距離に期待通りの"京都感"がつまっていて、いわば観光密度が濃い場所なんだと思う。

ランニングを始めて京都の街をぐるぐる巡ることが多くなったのだけれども、神社仏閣、とくに仏像好きの僕にとって、京都は本当に見所の多いところだと再認識することになった。

当初は行きたいお寺や神社に照準を合わせて走りに行っていたけれど、道中ここもここもと寄りたいところがあって、結局全くもって走るどころではなくなってしまった。それもたかだか5キロ、10キロの話である。(いずれ仏像ランマップとか作りたい)

 

京都で走るとなると、やはり一番は鴨川沿いだろう。整備された河川敷をそこそこ長い距離走ることが出来るし、近くにトイレや自販機もあるし、何かあればすぐにエスケープ出来るし、ランニングには適した場所であると思う。

しかしそれ以上に、鴨川河川敷には何と言うかいつもゆるやかな空気が漂っているのが心地良い。まさに憩いの場というべき空間、広すぎず狭すぎず、家の庭の延長のような場所なのだ。

子供連れ、サークルの大学生、若いカップル、外国からの観光客、カモにエサをやる中年男性、尺八を吹くおじいさん、そこにいる人それぞれが思い思いに過ごしている。そんな空間を走り抜けるのは結構楽しい。

 

ここでひとつ、森見氏に倣って僕も妄想してみよう。鴨川沿いを走っていると足元にボールが転がってくる。拾い上げると向こうから「すいませーん」と駆け寄る女性。そう、京都在住の本上まなみさんだ。

僕の姿を見て「裸足で走ってるんですか!?」と目を丸くする。そうですよ、と答えながらボールを手渡すと、もう一度「裸足で走ってるんですか!へぇ!」と驚き、「ボール、ありがとうございます。よかったら一緒にお昼ゴハンなぞいかがでしょう?」と控えめに、だけど当然のように誘ってくる。

もちろん僕はえぇどうもと軽く承諾し、案内された葉っぱ柄のレジャーシートに腰を下ろす。シートの端には「爽健美茶」と書いてある。

「これ、ナカガワ小麦店のバゲットなんですよ」と長いパンを無造作に突き出したかと思うと自分の方に向いたパンの先をかじって「端っこかたい」とケラケラ笑い出す。「あ、でも柔らかい方が食べやすいですね」といってバゲットを半分にちぎると中から出町ふたばの豆大福が転がり落ちて「もへもへ!」と叫んで大ウケする……

みたいな!こんなんみたいな!思わず妄想が暴走して迷走してしまった。素敵!鴨川ステキ!森見氏は本上まなみさんに会うという目標を叶えた。僕もいつか会えるかなぁ。そんな京都、貴方も走ってみませんか。