右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【神と仏の長距離走】八大神社 ~ 狸谷山不動院

この日の京都は最高気温35度を計測した。

今年は暑い。長梅雨のあとは冷夏になる、と誰が行ったか知らないけれど、何てことはない。猛暑だ。

ここ数日の暑さでまともに走れないのは実証済みだし、いつものペースで走ると2キロともたない

ということもあって、ちょっと近場の神社へ行くことにした。

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▲この向こうに大文字山の登山口が。避難しそうな気持をぐっと抑える。

ゆるゆるペースなのはもちろん、途中の公園や公衆トイレで顔を洗ったり、タオルを濡らしたりしながら進む。

いつものように山へ逃げたくなったけど、今回はちゃんと目的地があるので我慢する。

銀閣寺道を過ぎて京都一周トレイルの道順通りに進む。途中、比叡山への登山口近くも通るけど、ここもスルーした。

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▲この向こうに登山口が。比叡山の冷たい水がオレを誘う。

以前にも書いたけど、バプテスト病院は僕が産まれたところだ。ちなみに長女もここで出産した。(妻が)

このまま真っ直ぐ進むと、京都の東の端を通る白川通りに突き当たる。

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京都造形芸術大学あらため、京都芸術大学の建物。

北白川別当町の交差点を北へ進むと右手に京都芸術大学がある。さらに北上すると道路を挟んだ向こう側に「天下一品」の総本店がある。

このあたりにはいくつか有名なラーメン屋がある。実のところ京都は知る人ぞ知るラーメン激戦区でもある。

ここからもう少し西にある高野地区は京都ラーメンのメッカだ。

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▲ここが天下一品の総本店!何人か並んでた。

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曼殊院道を東へ。

天一の通りを東に入り山の方へ進む。そこから約200mほど進むと、一乗寺下り松がある。

一乗寺下り松と言えば、宮本武蔵が吉岡一門と戦った場所で有名だ。これには諸説あるんだけど、簡単に言うとこんな感じ。

 

武蔵、京都で名を上げたい。

当時、足利将軍家の師範をしていた吉岡一門に目をつける。

道場破りをして、2回武蔵が勝つ。

吉岡一門、ブチ切れ。

一乗寺下り松で門下生を集めて武蔵殺害を計画。

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▲交差点にある石碑。

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▲石碑には「宮本 吉岡 決闘之地」と書かれている。

吉岡一門は30人くらいだったとか、70~80人いたとか、100人超だったとか、人数的には定かでないんだけど、とりあえず多かったのは間違いない。

来週公開の『狂武蔵』では武蔵対400人という構図になっている。

とりあえず、武蔵は強かったんだなということ。

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▲石碑がある場所はこんな感じ。ただの住宅街の一角なのだ。

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▲振り向くと石鳥居が見える。

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▲柵があって入れないのだけど、八大神社の参道鳥居。

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▲近くには標石がある。

実はこの交差点は平安時代から交通の要所で、目印として松が植えられていた。それが下り松ということで、今植えられている松は四代目だそうな。

そこからさらに東へ向かうと、右手に詩仙堂がある。以前、比叡山を走っていて、気付いたら詩仙堂の裏に迷い込んだという印象しかないけど、庭園が有名なところで、現在は曹洞宗のお寺でもある。

さすがに汗だくで入るわけにはいかずスルーした。

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▲こちらは詩仙堂の入口。良さげな雰囲気がプンプンするぜ。

 

八大神社

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▲ここを抜けると八大神社の境内。

さて、そのすぐ近くにあるのが八大神社だ。由緒として祇園の八坂神社と同神を祀っており、北天王(北の祇園)と呼ばれていた。

宮本武蔵を祀っているのかと思ったらそういうわけではないらしい。

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▲武蔵作品がいろいろと紹介されていた。

境内には過去の武蔵作品が紹介されていて、過去11作品ほどが記載されていた。

記憶に新しいところでいえば木村拓哉の武蔵だけど、これまで三船敏郎高橋秀樹北大路欣也役所広司といった人が演じている。

僕が以外に思ったのは、高倉健佐々木小次郎を演じていたこと。へー、という感じ。

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▲本堂はずっしりとしたたたずまい。小さいながら迫力がある。

僕が訪れた時にはおじさんが一人、熱心に作品紹介を見ていたけど、ほぼ誰もいなかった。

そういうこともあって思い存分、境内を見てまわれたんだけど、広くないものの何か凛とした空気が漂う神社だった。

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▲武蔵の石像。思ったより細身。

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▲アップの写真を撮る。

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▲別アングル。頭にお箸が刺さってるのかと思った。

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▲当時の下り松の切り株(?)

何代目なのかわからないけど、武蔵が決闘した時の松が保存されていた。

ところで、その武蔵、決闘前にこの神社を通りかかって決闘勝利の祈願をしようとしたらしいんだけど、結局祈らずに立ち去ったそうな。

我神仏を尊んで神仏を恃まず(神様仏様は敬うけれどあてにはしないよー)

というのが彼の信念だそう。

つまり、一言でいうと武蔵が通り過ぎただけの神社なんじゃない?ということだった。

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▲境内はキレイに手入れが行き届いていた。

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▲奥に階段がある。登ってみる。

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▲お稲荷さんがありました。

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常磐稲荷神社とのこと。

八大神社を後にし、さらに山の方へ向かう。出てすぐそこにあるのが「野仏庵」と呼ばれる禅院だ。

残念ながらコロナの影響で閉まっていたけど、ちょっとステキな施設なのだ。汗だくのおっさんが入って良い場所ではない。

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▲野仏庵。羊の狛犬!残念ながらコロナの影響で休業中。

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▲そのすぐ横にあるお不動さん。

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▲厳かだぜ…。壁にでっかい草鞋がある。

そこからさらに坂を上り、住宅街を抜けること300m。狸谷山の表示が現れる。

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▲どうやらここからが狸谷山のテリトリーらしい。

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▲道の両脇にある石柱が宗教感を演出している。

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▲すぐ近くに車の祈祷所がある。

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▲京都の人なら一度は見たことある一番右のステッカー。おなじみ。

本堂へ行くまでに車の祈祷車と修行の滝がある。僕は車を持ってないので、祈祷所には興味ないけど、滝には興味ありありだ。

滝行に興味を持ったのは空也の滝へ行ってからだけど、京都にはいくつか滝行ができる場所がある。

とはいえ、単純に滝にうたれたいという不純な気持ちなので、いまいち滝行には踏み込めず、結局近所の川の治山ダムから流れる水で満足している。

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▲祈祷所の向かいにある修行の滝。矢印が指の絵になってるのはなんでや。

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▲看板は曲がってる。使われてるのかしら?

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▲誰でもできるみたいだけど、許可は必要みたい。

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▲ここが滝場。水が流れてないので水道使うのかな。

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▲滝場を後にし、健康階段を登る!健康階段ってなんやねん。

 

狸谷山不動院

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狸谷山不動院の入口。ここまでは車で来ることができる。

狸谷山不動院は鬱蒼とした山の入口にある。さっきの白川通りから1キロも離れてないのに、この異世界感はすばらしい。

ちなみに狸谷とは地名のことで、タヌキとは全く関係がない。しかし、何故か信楽焼きのシンボル、タヌキの置物がたくさんおいてある。

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▲たくさんの狸がお出迎え。

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▲吉田監督の石柱もある!

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▲ジメっとしてるし苔の感じも良さげ。いい雰囲気だ。

狸谷山不動院は朋厚(ともあつ)房正禅法師が開山したお寺だ。朋厚法師は木食行で知られる僧侶で、木食養阿(ようあ)上人とも呼ばれている。

ちなみに、木食とは木の実や草のみを食べる修行で、即身仏になるためにはこの修行が必須だ。僕も密かに即身仏になることを狙っているけど木食はイヤだ。

そんな彼が高野山からここへ修行の地を移したのが1718年。まあまあ最近のお話。

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▲鳥居が並んでいるのでとりあえずくぐる。

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▲この建物の中には…

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▲何かが祀られている。暗くて見えない。ボコボコと水の流れる音だけが不気味に聞こえる。

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▲何故か七福神の石像。その間には所々に狸の置物。

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▲階段を登っていると向こうに人影が…

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▲出た!空海パイセン!

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▲パイセンのお堂がある。帰りに寄る。

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▲階段を登り切ったら視界が開ける。おー広い。

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▲トイレの神さまのお社。べっぴんさんにしてくれい。

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▲本堂はこの上にある。ご立派。

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▲境内にも狸の置物がある。

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▲ちょっとコワい。

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▲どさくさにまぎれて狸じゃないやつもいる。

境内は広いわけではないけど、所狭しといろんなお堂などがあって楽しめる。山の中腹の境内は開放感もあってすがすがしい。

そんな中に一つ、宮本武蔵が修行した滝がある。お不動さんが持つ、「降魔の利剣」を会得したとかしないとか。

ちょうどその手前に錫杖(お坊さんが持ってるしゃらしゃらいう杖)がおいてあって、鳴らすと獣や毒蛇を退ける効果があるとのこと。

じゃあ一回鳴らすかー、としゃらしゃらすると突然目の前に何かが落ちて来た!

へびや!しゃらしゃらの効果抜群かっ!

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▲うお!へびが落ちて来た!

RPGでモンスターとエンカウントした時ってこんな感じなんだろうなっていうくらい突然の襲来!

そこそこ立派なシマヘビさんではないか。でもなんか変。よく見るとカエルをくわえてる!

ここで咄嗟に思ったのが「カエル助けなきゃ!」ってこと。だけど、へびの立場になったらせっかくのご飯を奪われたカタチになってしまう。

うーむ、どうしたものか…

僕は捕食に関して、自然のことだから人間が介入すべきではないと思うし、どちらかというと爬虫類派なので両生類には悪いけど、仕方ないなと考えている。

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▲よく見ると…あ、お食事中でしたか…。

ただ、これが田舎の山道で遭遇すれば何とも思わないんだけど、今回は場所が悪い。お寺の境内、しかも不動明王の御前で武蔵の修行した滝が目の前にあるのだ。

何かの啓示かと思うのは当然のことで、今まさに僕は究極の選択を迫られている。

カエルを助けるか、へびの食事を見守るか…

カエルが仏の化身だったら?カエルを逃がすことでへびに呪われたら?いや、そもそもへびに噛まれたら?トカゲは扱えるけど、そういやへび飼ったことないしな…とか。

ありとあらゆることを200通りくらい考えているうちにへびは岩場をするすると登っていく。

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▲お不動さんは何を思う…?

こころのなかでは見過ごそうと決めていたけれど、それでもカエルを何とかしてやりたいと思うのが人情。

岩に張り付いたへびを落とせば、びっくりしてカエルを離すかも。ワンチャンあるかも。そう思って右手でへびを払い落そうとした。

しかし何かを察したへびがするりと這い進み、右手はむなしく空振ってしまった。

結局、へびは草むらへ逃げて行き、僕はそれを見送るしかなかった。

ひと段落ついて右手を見ると結構な勢いで血が出ている!なにこれ!カエルのたたり?

と一瞬思ったけど、そんなわけない。さっき岩で指を怪我したのだ。

血が止まらないので急いで絆創膏をはったのだけど、もう何かさっきの自分の選択が間違ってたのではないかと思って、一気にテンションが下がってしまった…。

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水子供養もやってる。

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▲お地蔵さんもたくさんいる。

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▲結局、本堂にはお参りせず。

捕食事件もあって、何かこの場から早々に立ち去りたい気持ちになったので、本堂には入らずいそいそと帰路につく。

あの時、どうすれば正解だったのか、あれは間違いだったのか、悶々と反芻しながら狸谷山を後にした。

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▲山腹にあるだけあって、急な階段を登ってきた。

途中、お迎え大師の横にあったお堂だけど、どうやらお遍路の御利益がもらえるとのことで、イヤな気分をチャラにするためにもくるりと一周回ってみる。

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▲先ほどのお堂にあった小さい石門。

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▲お堂を囲むように道がある。これが二つ目の門。

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▲それに合わせて十三仏が安置されていた。

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▲三つ目の門をくぐる。

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▲そして四つ目。成就門と書いているから何か成就したんだろうな。

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▲さらばだ、狸たち!

白川通りまで下りてくると日差しが痛い。さっきの狸谷は山の中で結構涼しかったのにな。温暖化は人の営みが原因っていうのがよくわかる。

神社や境内を巡って体力が回復したとはいえ、この猛暑の中、走るのはやはりキツい。

大文字山を経由して帰ろうかと思ったけど、さすがに今からひと山登る気力もない。

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哲学の道まで戻ってきた。正面には大文字山の火床が見える。

「脳は身体の負荷を最優先に処理する」って誰かが言ってたけど、まさにその通りで、もう何も考える余裕がない。

さっきまで思い悩んだ捕食事件もどうでもよくなってきた。よくよく考えたら、へびがカエル食っただけのことやないか。

暑さと疲労で身体がヒート、考えられない頭はショート、へびもカエルもお前らニート

そんな感じでバイブスは上がってきたけど、ペースは上がらず早歩き状態。

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▲公園で足に給水。とりあえず身体を冷やす。

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▲ご褒美コーラ!

計算では家に着くころには19キロなんだけど、キリ良く20キロまで走りたい。水分も残りわずか、コーラを理由にあと1キロをしぼり出す。

結果、平均のキロペースは6:45というスピードだったけど、なんだかんだ20キロに到達できたのは達成感があった。

予定では15キロほどだったんだけどな。でも久しぶりに面白いお寺や神社をまわれて楽しかった。