右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】恐い間取り/松原タニシ

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結婚して10余年。独りで寝るということがなくなった。誰かと住んだら、そりゃあそうだ。

子供が出来てからは一緒に寝ることも多く、なんなら雑魚寝で一家全員がひと部屋で寝るなんてこともあった。

そんな環境が続いたためか、出張へ行きビジネスホテルで独り寝るとなると、何というか違和感がある。

その違和感は時に不安感になったり恐怖感になったりするわけで、そんな時、自分の心の弱さを痛感する。

何なら、ベットの下から足をつかまれるんじゃないか、ドアが勝手に開くんじゃないか、そんなネガティブなことばかり想像し、いよいよ恐い。

幸い(?)出張の際は飲みに行くことが多く、お酒に弱い僕はそんなことを考える間もなく眠りにつくのだけれど。

 

さて、本書の話。著者は事故物件に住み続ける、芸人の松原タニシ氏。

様々な事故物件に住んだ時に体験した不思議な出来事がドキュメントとして記されている。

家というのはセーフティゾーンでなければならないと僕は思っている。絶対安全地帯だ。

出張先のホテルならまだしも、自分の家を侵されるというのは本当に勘弁してほしい。

しかし、著者は安全であるべき家に危険を持ち込むのだから、そのメンタルには脱帽だ。

自分は絶対嫌だけど、他人がやってるなら是非見てみたい…

本書はまさにそういった欲求を叶えてくれる、希有な題材だと思う。

 

事故物件で起こる不思議な現象、それを信じるか否かは読者の自由だ。

だけど信憑性は別として、ついつい引き込まれて読んでしまうのはどこかリアリティがあるからだろうか。

著者が実際に体験した6つの物件、他人の物件、心霊スポットでの話と内容もバリエーションがあって面白い。

そういえば以前、僕の兄が東京で築40年のボロアパートに住んでいた時のこと。

どうも身体の調子が悪い、寝ても疲れが取れないなんてことがあったそうだ。

ある日、友人が泊まりに来て、後日「お前の部屋で白い服の女を見た」と言われたらしい。

それを聞かされた日はさすがに家で寝ることができず、友人宅に泊まったそうだけど、いつまでも家を空けるわけにはいかない。

しばらく住み続けるうち、また奇妙な出来事があった。

実家の母が兄の家に電話を掛けていた時のこと。突然声が途切れたかと思うと、すすり泣く声が聞こえてきたらしい。

「どうしたん?どうしたん!?」と母が呼びかけても泣くばかり。

一度電話を切って掛け直すと、兄が出た。

「あんた、何泣いてたん!?」と聞くと「泣いてるか!」という返事。

よくよく思い出したら、どうも女性のすすり泣く声だったとか。

 

…と、そんなお話が本書には詰まっている。

誰しもひとつやふたつ、この手の話は持ってるんじゃないだろうか。

僕もあと2、3コ話ができる。

家というプライベートな空間にまつわる話だけに興味もわくのだけれど、ゆめゆめ自分の身には起きて欲しくない。ホントにそう思う。