【読クソ完走文】ざんねんな努力/川下 和彦 たむらようこ
最近、ちまたで流行りの「残念な」シリーズ。本来思っていたものと異なることを指したり、自虐的な意味合いだったりする。
この「残念」という言葉に深い意味をもたらしたのはSNSの影響じゃないかと、僕は思っている。
リア充を装って背伸びした投稿、盛りに盛ったセルフィ―、面と向かっては言えない類の過激なコメント…。
いずれも表面だけをかするネット特有の現象であって、その中身を覗いてみると、おそらく「残念」と言わざるを得ないのが実情だ。
もちろん、ネットでそれらを演じている側もまた己の残念さを自覚しているので、この「残念な」という言葉に共感を得る。
それが「残念な」シリーズを生み出した背景ではないかと思っている。
…ちょっと面倒くさい前置きになってしまったけれど本書の話。
帯に書かれた「頭は悪くない、努力もしている…でも…なぜかうまくいかない」という言葉に、吐き気をもよおすくらい共感した。
僕も幼少の頃から「要領が悪い」だの「本番に弱い」だの、さんざんなことを言われてきたクチだ。
大人になってもそのあたりに思い当たる節はあって、頑張れど頑張れどなかなかひと花咲かせない。
大器晩成という言葉を信じてやってきたが、40も過ぎたのだからそろそろ成ってくれないと、それこそ残念だ。
本書は間違った頑張り方をしているガンバール国とちょっとした工夫で成果を出しているガンバラン王国、二つの国を比較しながら物語形式で進んでいく。
紹介されている“工夫”は、既存のビジネス書や自己啓発本にも記されている内容なので目新しくはないけれど、とてもわかりやすく紹介されていて良い。
ルーティン化、ゲーミフィケーション、レコーディングなどなど。
具体的には朝ランするためにランニングウェアを着て寝るとか、10キロ走ったらケーキを食べれるとか、そういった内容だ。
僕をはじめ、人間の意志は弱い。だけど知恵と工夫がある。それらをフル活用して日常的に実行できれば、ちゃんと成果がついてくるよね、というお話。
結論としてまとめられた「がんばらない十か条」は覚えておいて損はない。
「努力を努力と思っているうちは報われない」というのは最近引退した大リーガーの言葉。
おっしゃる通り、自分がしんどい思いをしたからといって、それが成果につながるわけではない。残念ながら。
勉強でも仕事でもそうだけど、楽しくやった方が成果が出るものだ。
同じ大リーガーが「貫いたのは野球を愛したこと」とも言っている。やるべきことに興味を持つ、好きになる。結果を出すためにまずはそれが必要なのかもしれない。