右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】僕がカンボジア人になった理由/猫ひろし

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カンボジアへ旅行に行くと決まって、まっさきに思いついたのが猫ひろし氏のことだ。彼は芸人でありながら、カンボジア国籍を取得し、カンボジア代表としてリオ五輪に出場したアスリートでもある。

正直、彼の芸に詳しくはないのだけれど、フルマラソンを2時間27分52秒で走るという、すばらしい記録を持っている。自分がランニングをし始めてから思うのだが、サブスリー(フルマラソンを3時間以内で完走する)を達成している人は皆、超人だ。

本書は猫氏がいかにしてマラソンを始め、カンボジア人となり、オリンピックに出場したのか、彼の半生とともに記された自叙伝である。芸人らしく軽いノリで語られている内容ではあるが、多くの決意と決断を下してきた稀有な人生が記されていた。

 

見知らぬ土地を走る楽しみ

僕は普段、出張に行くと走ることが多い。走る習慣があるからという理由だけでなく、「見知らぬ土地を走る」ことが楽しいからでもある。宿泊先からどのルートで走ろうかとGoogleマップを見ているときはワクワクするし、何なら走るコースに合わせてホテルを予約することもある。

だから海外旅行に行ったら、絶対に走ってやろうと思っていた。海外へ行くのは実に20年ぶりだ。おいそれと行けるものではないので、この機会にどうしても走りたい。異国の見知らぬ街を走れるなら、観光地でなくても全く構わないのだ。

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▲今回走ったコースの地理感。アンコール・ワットまではちょっと距離がある。

本書、第五章の「僕のカンボジアライフ」では、カンボジアでのランニング事情に触れている。実際、この内容はとても参考になった。

今回の旅行中、カンボジアでランニングしている人は見かけなかった。カンボジアではあまりマラソンが普及していないそうなので、現地の人が走らないのはわかる。けど、旅行者の中には僕と同じく走る習慣がある人はいるはずだ。

自分が走ってみてわかったことだけど、きっとそういう人たちはホテルのジムで走っていたのではないかと思う。カンボジア、僕が滞在したのはシェムリアップという街なのだけれど、ここはいろんな意味で走るには適していなかった。

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▲宿泊したホテルにも走れる設備はあった。利用していないが。

 

走りにくいよカンボジア

まず、道が悪い。日本のように歩道が整備されているわけではなく、歩道があってもデコボコしていたり、ゴミが積まれていたりと走りにくい。車道との境界があいまいなところもある上、交通ルールも適当なので接触事故注意だ。

路地に入っても、たいてい舗装されていない砂利道なのでこれまた走りにくい。車が通ると砂やホコリが巻き上がるので空気も良くない。コンタクト使用者の僕にとって、砂埃は天敵なのだ。
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▲今回はワラーチで。路面もこんな感じでボコボコ。

さらに、暑い。南国だから当然だ。歩いていても暑いのに、いわんや走るをや。走るなら早朝か夜しかない。だけど夜は治安の問題もあるのでできれば避けたい。

猫氏がアンコール・ワット周辺は意外と涼しいと記していたが、確かに森があるので涼しかった。だけど、宿泊先からそこまで行くのが大変だ。結構な距離を走らなければならない。トゥクトゥクで遺跡まで行って、走って、トゥクトゥクで帰ってくるっていうのも本末転倒な気がする。

そして、最も厄介な問題。それが犬だシェムリアップでは犬はたいてい放し飼いだ。いや、むしろつながれている犬を見ていない。飼い犬か野良犬かの判断基準もわからない。

猫氏が走る際、誰かに自転車かバイクで並走してもらい、犬が寄って来たら追い払うという方法でトレーニングしていたそうだ。しかし、僕が走る時は独りだ。サポートしてくれる人はいない。

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▲前方に犬発見!屋台の人の飼い犬だと思うが…

シェムリアップでランニングをしている方のブログを拝見すると、犬がいたら歩けとアドバイスがあった。カンボジアの犬は飼い犬でも普通に噛んでくるそうだ。そして噛まれたら狂犬病に感染するリスクも高い

こんな悪条件の中、わざわざ走る必要もないわけで、走って汗をかきたいなら大人しく室内のジムで走っていれば良い。

しかし、海外で走ることに並々ならぬ思いを抱いていた僕は、どうしても街中を走りたかった。Googleマップで何度もシミュレーションしコースは完璧だ。あとは犬にだけ気をつければいい。

 

実際に走ってみたレポ

宿泊していた Mane Village Suites から西へ向かって走ることにする。ホテル前の道は未舗装の路地で、それがしばらく続く。日本で言うと高速道路の高架下のような雰囲気だ。荒れた路面に散乱するゴミ、さすがに裸足では走れない。

ところどころ民家もあるが、空き地のようなところにポツリと家が建っている。ちゃんとした家もあるが、バラック小屋のような家も多い。

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▲鶏も放し飼い。こいつらは怖くない。

走り出した時間が遅かったこともあり、辺りがどんどん暗くなる。暗くなると犬どもが活発化するとあったので、かなりビビりながら走っていく。

路地を抜けて舗装路へ出たけれど、白線などもなくすぐ横を車が通る。できるだけ路肩を走るようにしたけど、これがまた荒れていてまともに走れる感じがしない。

結局、犬には遭遇したのか?ということだけど、それはもう何匹もの犬に遭遇した。犬の姿を見かけるたびにスピードを落とし、歩き、横目で確認しつつ、ある程度距離があいたら走り出す(逃げる)。そんなことを繰り返しているのだから、ちゃんと走れるわけがない。

一度、強面の犬が首筋をピンと伸ばしてこちらを見ていた。犬を飼っていたからわかるのだけど、これは明らかにこちらへ注意を払っている仕草だ。案の定、足の爪をカチャカチャ言わせつつ地面をクンクンしながらこちらへ向かってくる。

どうやら彼のテリトリーに足を踏み入れたみたいなので、最大速度の徒歩で大回りしてやり過ごす。ふんふふ~んといった感じで、精一杯すました様子をアピールしながら歩く。後ろは振り向かない。

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そうこうしてると、ホントに真っ暗になってしまった。細い道は明かりがないので、いよいよマズい。猫氏はプノンペンiPhoneをひったくられたそうだが、ここだって強盗が襲って来ても不思議じゃない。自分の想像にゾッとしながら、急ぎ外灯がある大通りまで走る。

カンボジアン・カルチャー・ビレッジの横を北上し、空港と市街地を結ぶ国道6号へ出たら東へと向かう。ここは大通りで両脇に商店やホテルもあるので、相変わらず走りにくくはあるけど比較的安心だ。

ただ、このあたりから胸が苦しくなってきた。空気が良くないせいか、蒸し暑さのせいか、原因は定かでないが全然気持ちよく走れていない。あーしんど。

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▲何故かGPSの計測が開始されなかったけど、走ったルートはこんな感じ。

結局、約6キロ、35分ほど走って終了、非常にスリリングな記念ジョグだった。正直、ランニングとしての質は良くなかったけど、あこがれの海外ランニングを遂行できたことは僕にとって良い思い出になった。

ただ、シェムリアップは走るに適した場所ではない。とくに夕方や夜はいろいろ怖い。次に走るならやっぱり早朝明るくなってからだな。そう、性懲りもなくまた走りたい

ちなみに、ここシェムリアップでは2つのマラソン大会が開催されている。「アンコールエンパイア・マラソン」と「アンコールワット 国際ハーフマラソン」だ。次回、カンボジアへ旅行へ行く際は、どちらかの大会に合わせて行けたらいいなぁと思う。

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▲無事戻る!ゴール!プール!ビール!