右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】バッタを倒しにアフリカへ/前野 ウルド 浩太郎

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「昆活」という言葉をご存知だろうか。昆虫採取から最近流行りの?昆虫食まで、昆虫に関わるあらゆる活動を意味する言葉だ。カブトムシを食べた地下アイドルが事務所を解雇されるなど、今、僕の中で昆活がアツい。いや、だからと言って何かしてるわけじゃないけど。
虫への興味が深まる今日この頃、ウルド前野氏の「バッタを倒しにアフリカへ」を読んだ。バッタを食べるのではない。バッタに喰われることを夢見てアフリカへ渡った男を描くノンフィクションだ。
前野氏はサバクトビバッタを研究する昆虫博士として、アフリカはモーリタニアへ滞在する。毎年、バッタによって甚大な被害を被るアフリカを救うべく、バッタの研究活動をおこなう、文字通りの奮闘記。前野氏の活躍はプレジデントオンラインやWebナショジオでも公開されているので、そちらをご覧になって欲しい。

話はそれるが、僕はひとつの分野に深く没頭する人が大好きだ。爬虫類ハンターの加藤氏やさかなクンしかり。自分自身が寝食を忘れて何かに没頭出来るタイプではないので、このテの人はとても尊敬するし、見ていて気持ちがいい。逆にこういう人じゃないと研究者は務まらないと思うし、もちろん著者、前野氏もこのテの人だ。

本書を読んで、あらためてアフリカでは日本の常識は通用しないことがわかった。ヨシダナギさんの本にも書いてあったけど、荷物がちゃんと届かないとか、平然と賄賂を求めてくるとか、ありとあらゆることが僕らの知ってる世界と勝手が違う。ホントに心折れそうな環境だけど、前野氏は自分のやりたいこと以外のトラブルについてはさほど気に病むような事もなく、目的を達成するためドンドン前に進んで行く。まさに「死ぬこと以外、かすり傷」的な印象だ。

バッタの研究は自然相手。自分の思うようにいかないことだらけで見事に肩透かしをくらい続ける。遅々として進まない研究に追い打ちをかけるように資金の問題、将来への不安が襲いかかり、あげく昆虫学者になる夢も叶わないかもしれない…そこまで追い込まれてしまう。四苦八苦、七転八倒、四面楚歌。僕ならもはや降参だ。どうしようもない。だけど前野氏はそれでも進み続ける。

鳴かず飛ばずの惰性で行くよりも、わめき散らしながらの一年にすべてを賭けてみよう。

出し惜しみせず、やれることはすべてやる、そんなスタンス。前野氏はこうも言う。「皮肉なことに「もう研究ができなくなる」という研究者にとって死に値する瀬戸際に追い込まれ、ようやく自分自身と真剣に向き合えた。」なるほど。『俺は沢ヤだ!』の著書、成瀬陽一氏も同じような事を言っていた。「意外にも、状況が悪ければ悪いほど、人間の感覚は敏感になっていくものである。」

もうダメ!という状況からどう巻き返すか。それを実行できる人は本当に強いと思う。ロングトレイルを走っていると、もうダメ的な状況が何度か訪れる。その度に自分を奮い立たせて切り抜ける。僕の場合はこんな些細なことだけど、それでも少し自分が強くなった気がするものだ。前野氏の命を賭けた決断とは比べようもないけれども、本書を読んであきらめず泥臭くも前進する大切さを再認識することができた。

ところで、昆虫が苦手という人は多いと思う。それならそれで人生何か困ることはないと思うけど、もしあなたが昆虫嫌いを克服したいなら、爬虫類を飼うことをオススメする。もちろん昆虫を食べる種類がいい。最近、我が家にエボシカメレオンがやって来たのだが、コウロギかワームを餌として与えている。こうなると虫という認識ではなく、ただの餌なので触らざるを得ない。そんなことを続けていると虫への耐性が付いてくるもので、全く抵抗がなくなってしまう。あえていうならそれが僕の昆活かもしれない。

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エボシカメレオンのカメレくん。ちょーかわいい!