右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】まんがでわかるまんがの歴史/大塚英志

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クールジャパン戦略が推進されて約8年が経つ。日本のイイモノを海外に推して行こうぜ!というこの政策、もちろんコンテンツ産業としてマンガやアニメ、ゲームなどのエンターテインメントも含まれる。同業界に身を置く立場としては、ほとんど「クールジャパン」などというものを意識したことはないのだけれど、これらが日本の誇れる文化のひとつであるとは間違いない。

中でもマンガはその歴史も含め、最も重要なコンテンツだと思う。ちょっと堅苦しく書いてしまったので、もっとラフな感じで言うと、僕はマンガが大好きなのだ。もしかして一番身近な娯楽はマンガかもしれない。(ついでに言うと漫画喫茶も大好きだ。)

そうです。75年生まれの僕はいわゆる「ジャンプ世代」。初めて読んだジャンプは、ちょうど『北斗の拳』が巻頭カラーで、ケンシロウがマッドサージのニードルナイフに全身の血を噴出させている場面。からの「たわば」。もうこれ以上、小学生男子を魅了する展開があるのかといいたい。その時の衝撃はいまでも鮮明に覚えている。

僕がマンガにハマったキッカケはある単行本を読んだことにある。田舎のばーちゃんから届いた荷物の中にマンガの単行本が2冊入っていたのだが、それが「キン肉マン」と「ダッシュ勝平」だった。ジャンプとサンデー。ここで「キン肉マン」を選んだことで僕の運命が決まったと言っていい。そして幼少時代はジャンプ黄金期真っ只中を過ごすことになる。

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▲僕のマンガ好きを決定的にした、ばーちゃんからの一冊。1982年10月15日、初版!

マンガには並々ならぬ思いがあるわけだけど、結論から言うとマンガなんて「おもしれー」「つまんねー」でいいと思う。もしくは「かっこいい」「かわいい」でもいい。あまり深く考える必要はないし、作品について論じることも必要ない。ただ読んだ人が感じたまま素直に受け止めれば良いのだと思う。これはゲームやアニメ、映画や小説だってそうだと考えている。

ただ、マンガというコンテンツの背景や生い立ちを知ることでより深く作品を知ることができるし、異なる楽しみ方も増えると思う。いやむしろ、政府がクールジャパンという国の政策としてマンガを推している以上、その歴史を知ることは我々国民にとって必須なのかもしれない。そして今回の「まんがでわかるまんがの歴史」を読んで思ったこと、それは「マンガの歴史を知ることが近代日本を知ること」と言っても過言ではないということだ。

日本のマンガを語る上で、絶対に外せない人物、それが手塚治虫氏である。以前、マンガ好きを公言する後輩が手塚マンガを読んだことがないという、あってはならない過ちを犯していた。かく言う僕も手塚マンガをすべて読んだわけでもないので、あまり大きなことは言えないが。(手塚治虫記念館には2,3回行ってるけどな!)

戦中戦後の日本において彼の功績は言うにおよばず、今回本書を読んで手塚氏の偉大さが僕の中でより明確になった。

戦争は決してあってはならないことだし肯定できないことだけど、戦時中という極限までネガティブな環境が手塚氏の創作活動へ与えた影響は大きい。同氏の『紙の砦』はまさに戦争真っ只中の生活を題材にしたいわば自叙伝的な作品なのだが、そのことが痛いほど伝わってくる。

彼の作品を日本マンガのルーツとするなら、今日のマンガ文化を考える時に日本が経験した太平洋戦争はその背景として押さえておくべき要素と言える。繰り返しになるが、国がマンガを日本文化として積極的に紹介するなら、それを発信する僕らはその歴史的背景、文化的背景を学ぶべきだと思う。これはわりと真面目に言っている。

あとがきに本書は「学習まんが」である、と書いてある。文字通り、マンガとともに日本の文化、歴史を学習することができた。また著者は「まんがでわかる」という書名にうっかり引っかかってとんでもないものを読まされたと困惑し、怒る読者も少なからずいるだろうとも言っている。

本当にその通りだった。今回のブログ、マンガ最高楽しいうぇ〜い!という内容になる予定が、まさか戦争に触れて書くことになるとは思ってもみなかった。

僕はあまり少女マンガを読まないのだけれど、本書を読んで少女漫画に対する考え方が変わり興味を持つようになった。それくらいマンガの歴史は面白い。そして先人達の様々な努力、試行錯誤、創意工夫があって現在のマンガが成り立っていることがわかり、その歴史を知ることでより深く今のマンガを楽しむことができると思うのである。

ところで、年齢がいくと新しいモノに抵抗というか馴染みにくくなっていく。それは音楽であったり服装であったり食べ物であったり、マンガも然り。それが「老い」だ!と大学時代に師事した教授が言っていたことがずっと心に残っているので、せめて話題作には目を通そうと、毎年発刊される『このマンガがすごい』はチェックするようにしている。

今年の話題作、いくつか読んだ中で今のところ一番印象的なのが『衛府の七忍』だ。『シグルイ』の作者が描く歴史エンターテインメント、ジャパニーズファンタジー、ぶっとびチャンバラ忍者活劇である。

表現の過激さは読む人を選ぶかもしれないが、型破りという意味では群を抜いている。真剣さ重々しさと相反する馬鹿馬鹿しさ突拍子のなさ、それらが迫力あるダイナミックな画で展開される。ギャグ的要素は無いはずなのに思わず笑ってしまう痛快さ。

これは『バーフバリ 』に通じる格好良さを感じる。勝手な想像だけど、作者はやりたい放題、描きたい放題やって楽しみながら描いてるんだろうな。きっと描いてて面白いに違いない。だから読む方も面白い。『漫勉』に出てくれないかな。

何かいつもに増してまとまりのない文章になってしまった…。マンガという壮大な題材を語るには僕の力量不足だったか。マンガについては書きたいことが多すぎる。またいずれ別のカタチでマンガについて語りたいと思う。

結局、マンガは普段手軽に読むものだし娯楽のひとつに過ぎないわけだけど、その身近さからは想像も出来ない激動の歴史を経験し、成長進化し、時代時代の人々を楽しませてきたと言える。

先日、娘と二人で漫画喫茶に行った。言葉は交わさずともマンガを通して親子の時間が過ごせるのは僕にとって嬉しい限りだ。