右足の幅がFでした。

サブ6ランナーかく語りき

【読クソ完走文】山の霊異記 霧中の幻影/安曇 潤平

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どういうわけか年を重ねるごとに "怖い" という思いが強くなった。以前はオバケや幽霊の類にあまり興味がなかったし、霊感のない自分には関係ないことだと思っていたし、今でも人間の脳は電気信号でピピッとしているだけで、視覚、聴覚、感覚ですらごまかすことができると思っている。

ところが!最近は出張などで独りで寝る時など、意味なく不安な気持ちになって余計なことを考えることが多くなった。寝ている時に足を引っ張られたらどうしよう…と不安に思って布団のすそを折り返し、袋状にして足先を保護してみたり…。そんな涙ぐましい工夫をしているわけだが、そんな努力むなしく、先日ちょっとばかり怖い思いをしてしまった。

はっきり言うと、これは間違いなく夢なのだが、いつものビジネスホテルに泊まっていた時のこと。夜、寝ていると不意に目が覚め入口ドア付近の明かりが付いてることに気がついた。電気は消したはずなのに一体誰が…?と思った瞬間、金縛り。仰向けのまま首を右に向けると、まっすぐ伸びた右腕が全く動かない。

マジか!マジか!と思って正面に向き直ると目の前に顔らしきものがある。ちょうど僕の頭の上から覗き込むように、顔と顔は5センチほどしか離れていない。あまりに近すぎるのと逆光気味で影になっているのと目がしっり開いていないのもあって、ピントがぼやけたような感じでなんとなくしかわからない。

それでも顔であるのはわかる。色は青白く、目のまわりが黒く、髪はロッチ中岡と同じようなチリチリの長髪で、若くはないけど女性の顔。うわぁ…顔やぁ…と思って反射的に目を閉じると、なにやら鼻息をホフッとかけてくる。よく犬が鼻を鳴らすあんな感じ。犬かっ!と心の中でつっこんだところまでは覚えているけど、どうやらそのまま眠りについてしまったらしく、そこから先は覚えていない。

もう一度言うが、これは夢である。だいたい、覗いてきた顔があまりにステレオタイプな幽霊であるので、これは自分の脳が作り出したものなのだ。それよりなにより、こわいこわいと思っていたのが原因で、あえて自ら恐怖体験を作り出してしまった。幽霊が鼻息を掛けてくるオチなんかは怖さとユーモアが混じり合って我ながら上出来といえる。あーこわかった。

というわけで、また読んでしまった山にまつわる怖い話。以前も『山怪』という本を読んで不必要に山への恐怖心を募らせたわけだけど、今回も同様に山の怖さ(遭難するとか現実的なことではなく)をまざまざと植え付けられた。本書はただ単に山を舞台にした怪談話であるわけだけど、そもそも山は未知であるところが多いわけで、不思議な出来事も妙に納得してしまう説得力がある内容なのだ。

しかしですよ。こういった話では何と言うか、一方的に向こうから怖がらせてくるのですよ、アイツらが!僕はそこが納得できない。ただ山を歩いているだけで谷底へ導こうとしたり、天気を悪くして大変な思いをさせたり。全然関わりもなけりゃ縁も所縁もない相手に対してちょっとひどくない?これって通り魔と同じじゃない?そんなの許せなくない?

かつて遭難して行方不明となった登山者がそこを訪れる人を危険な目に合わせるって、どうも腑に落ちない。山に登る人はそんな意地悪い人じゃないし、ある程度命の危険があると覚悟を持って登ってるわけだし、むしろ相手が事故に遭わないように気遣える人じゃないかと思う。

山と食欲と私』の第69話におばけ山岳会の人々が登場するけど、彼らは足を踏み外して滑落しそうになった主人公を助けている。霊的なものが存在するのであれば、むしろこういった行動に出ると思うのだ。仮に僕がトレラン中に命を落とすようなことがあれば、きっとそこを通る人には決して悪さをしないつもりだ!…いや、もしかするとちょっとおどかすくらいはするかもしれないけど(笑)

僕は登山家ではないので、キャンプ場は別として、山にテントを張って寝たことはない。暗いし怖いし。だけど今年はテントを買って一度泊まって夜の山を経験してみようかと思っている。べ、べつに『ゆるキャン』に影響されたわけじゃないんだからね…!ま、もちろんソロでなんてとんでもない話なので、息子を誘ってあたかも父のワイルドさを見せつけるように。わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい的な。とりあえずそれまでにビジネスホテルで独り平然と寝れるよう心の鍛錬をしておきたい。