【読クソ完走文】世界の混沌を歩く ダークツーリスト/丸山ゴンザレス
今、地上波で非常に人気のある番組『クレイジージャーニー』。何を隠そう僕も放送開始当初からの視聴者で、あまりテレビを見ない我が家においても必ずチェックする番組のひとつになっている。
そのジャーニー達の中で多くの出演回数を誇るのが本書の著者、丸山ゴンザレス氏。世界中の裏社会、闇ビジネス、貧困などを取材する危険地帯ジャーナリストとして活動されている。
と、もはや説明も不要なくらい有名な方であるし、本書の内容も番組で放送されたものが基本となっているので、そのあたりには言及しない。
世界にはホントに様々な価値観があり生活があり、善悪すらも画一的に定義できないものなのだなと思い知るわけで、ただ「生きる」ということだけが真理のように思えてくる。
以前、 石井光太氏の『物乞う仏陀』や『レンタルチャイルド』を読んだ時は、万力でゆっくり押し潰されるような読後感で、しばらく暗い気持ちになったりもした。
ただ、本書は装丁が鳥山明風のポップなイラストであることやクレイジージャーニーでの演出がバラエティめいていることなどから、それほど重くのしかかることはない。(個人的には)
いや、もちろん書かれている内容はかなり濃くかつヘビー。もしも『NNNドキュメント』なんかで放映されていたら、それはそれで重い内容になっていたと思うわけです。
しかしこういったとっつきの良さを出すことが多くの人に触れる機会になり、かつ身近な出来事として考えるキッカケになるわけで、導入としてはおそらく正解なような気もする。
ところで、僕は異文化に興味があるので、本書も面白く読ませてもらった。しかし、銃密造やら麻薬密売やらギャングの抗争のことを知ってどうなるのか?そんな疑問も聞こえてくる。
本を読んで人生が変わる人もいれば、「つまんね」で終わる人もいるわけで、それはそれで問題ないと思ってる。自分が感動したからって他人も感動するとは限らないし。
しかし、本書に書かれてあるのは圧倒的な現実であり、自分たちと地続きの世界で起きているあまりにインパクトのある出来事である。それを前にして何も感じないわけにはいかない。
人は感情を揺さぶられると胸の中に生まれた"何か"を吐き出したくなる。それを言語化するには考えることが必要だし、考えるには素材やツールが必要になる。
抽象的な表現で申し訳ないのだけれど、それが生きていく上でとても必要なことだと思う。「なぜ」「どうして」「どうすれば」と疑問をもってそれを考えること。そんなきっかけを本書は与えてくれる。
そういう意味では、学校でこそこういう出来事を紹介し考えるべきだし、修学旅行にTDLとかUSJじゃなく、スラムや大麻農園に行くべきなのだ!そんな僕は温泉に行きたい。(意味不明)
ただ、本書に登場する現地の人々は過酷な環境で暮らしているにも関わらず、悲壮に暮れて生きているわけではない。地下の若者もスラムの子供も本当にたくましく生きている。
「自ら考えたくましく生きること」、人生を過ごす上で大切なことをあらためて感じさせられた一冊だった。
それにしても、ひとりで服屋に入ることも躊躇われる僕にとって、丸山ゴンザレス氏の行動力には脱帽どころか頭が取れる。独りでグイグイ進める人って素敵やん。