「裸足、スゴイっすね」って、何がスゴイのかって話
日本全国が東京マラソンに盛り上がる2月26日、地元京都で行われた第33回 宇治川マラソン大会に出場しました。エントリーしたのはハーフの部。以前のブログで書いた通り、今回の目標は
裸足でハーフマラソンを完走すること
でした。願わくば記録更新、可能であれば2時間以内にゴールを!というサブ目標も立て、公式大会では初の裸足出場を果たしたわけです。
▲スタートラインにて。周りからの視線を痛いほど感じる…
いきなり結果を書きますが、目標である裸足完走、達成しました!
ただ…
タイムは2時間6分12秒(公式)、2年前に走った記録よりも2分遅いゴールでした。このあたりの悔しさはおいおい書いていくとして、今回初めて公式の大会で裸足参加をしたことで思ったこと、感じたことを書きたいと思います。
▲激下り坂が終わり、宇治の商店街に入るところ。道幅が狭いから応援も近い!
この大会、コース幅が狭いところが多くて沿道の応援がとても近く声がよく聞こえます。そうすると「あの人裸足や!」という声をよく耳にするわけですが、それはあたかもレアポケモンを見つけた時と同じような感じのトーン。確かに僕が確認した限り、ワラーチで走ってた人が2人いただけで、裸足の人は見なかったからあながち間違いではない。そんな声援?がだいたい5割。
後は「え?何あの人?おかしくない?」という奇異の眼差し。もしくは「ケガするのに危ない」とか「意味わからん」的なネガティブな声援?が4割。いや、実際はもうちょっと多いかもしれない。何にせよ自分が思っていた以上に裸足はマイノリティだったということを痛感しました。
▲平等院をすぎて宇治川へ向かう途中。なかなか良いペースで走れてる!
そして残りの1割はというと、同じランナーの方からの声援?というか感想というかそういうものなのだけれど、「裸足、スゴイっすね」というもの。その後に続く言葉はたいてい「痛くないですか?」という類のもので、僕はたいてい「痛いっす(笑)」って答えてはいたものの、何度かそう話しかけれられるたびに何がスゴイのか?っていうことを疑問に思うようになったワケです。
▲宇治川ライン!まだ景色を愛でる余裕あり。このあたりで初めて声を掛けられた
ちょうど5キロ手前で黒部名水マラソンのTシャツを着た男性に「裸足ですか~」と声を掛けてもらいました。「そうなんです。でも初めてのハーフなんで行けるとこまで行こうと思ってます。」なんて感じにひと言ふた言交わしたのち、男性は颯爽と走り去っていきました。
そんな感じで数人から同じように声を掛けてもらえて、シューズで走ってる時はなかった交流があったりして(僕は自分から声を掛けることをほとんどしないから)とても嬉しかったりしたのですが、声を掛けてくれた人は皆、僕を追い抜いて行ってる。いや、速くてスゴイのはあんたらやん。
▲約5.5キロ地点の天ヶ瀬ダム。このあと3キロは小砂利をセメントに混ぜたザラつき感アップの遊歩道が続く。足裏に効くぜ…泣
中盤まで、思ってた以上に調子良く走れてて、予定よりオーバーペースかなとは思ったけど、身を任せてそのまま走りました。裸足で走っていると路面が気になってそっちに集中するので、良くも悪くも周りのランナーの情報が入ってきません。
僕はすぐに周りのペースに影響されるし、あいつを抜かす!とかこいつには抜かれない!とか変に意地を張ってペースを乱すこともあるので、そういう意味では自分の走りを確認しながらマイペースで走れていたと思います。
▲11キロ地点の給水、持参のジェルで補給。賞味期限ブチギレ!
これまで裸足走行の最高距離が10キロで、その時は水ぶくれができてそれがつぶれて出血激痛という状態だったので、とにかく足裏のダメージには気を付けました。できるだけ白線の上を走るようにして、極力足裏の消耗を抑えました。
▲でっかいコーン発見!ここで折り返し!
▲下り坂の黄色の帯、ドリフト防止かスピード抑止のものだろうけど、これ痛いし!
で、話が途中になってた「何がスゴイのか」って話。この「スゴイ」は当然ながら「マラソンはシューズを履いて走るものだ」ということが前提としてあります。もしくは「屋外は靴を履くものだ」かもしれない。
あるべきものがないからスゴイと思うのかというと、そうじゃない。だって、プールで海パン履かずに泳いでいる人をみて「スゴイっすね」とは言わない。いや、その度胸はスゴイけど。だから単純に「シューズを履いてないからスゴイ」わけではないと思う。
▲折り返しからの長い下り。これも裸足だとキツかった…。写真を見ればわかる、白線の上で撮ってるやん。
じゃあ、何がスゴイのか。一般の人が受ける裸足の印象も含めていろいろ考えてみた結果、真冬のオホーツク海でカニ漁船に乗ったロシア人が半袖だったのを見て「スゴイ!」と思ったのと同じ種類ではないかと。つまり、「自分ではようせんしやろうとも思わへんけど何かスゴイなぁ」ということなんじゃないかと。ちょっと京都なまりが入ってしまいましたが、つまり、「手作りのウッド1本でゴルフをする人」とか「カレーしか食べずに悪の軍団と戦う人」とか、そういうくくりでの「スゴイ」のような気がするワケです。
▲13キロを越えたあたりから始まる宇治川マラソン名物のアップダウン。
別にそう言われるのがイヤとかそういう意味じゃなくて、1年そこそこの経験しかない僕の裸足ランがスゴくないのは当然で、ついでにサブ6ランナーだからそれも含めてスゴくない。だから裸足で走るだけでスゴイなんて言われるのは何かやっぱちょっと引っかかる。でもそう考えるなら納得できるかな、という結論です。
▲背中に丸いデザインがあるTシャツの方にも声を掛けてもらいましたが並走できず…
しかしながら、すべての裸足がそういう意味でスゴイと言われているわけではなくて、実際に裸足でいくつもフルマラソンを完走してる人や100キロ完走してる人がいて、そういう人はランナーとしてスゴイ上に裸足で走るスキルの高さがスゴイし、夜のトレイルを70キロも裸足で走り抜けた人なんてスキルはもちろん、足裏のしなやかさとか、人としての根本的な運動能力とかスゴイし、本当にスゴイと言える人達が存在しているということは強く言っておきたい。
▲2年前、裸足ランナーに颯爽と抜かれたのがこのあたり。今年は多くのシューズランナーに抜かれてしまった。
そのスゴさを理解するには、これはどんな世界や業界でもそうだけど、やっぱりその環境に少しでも足を踏み入れてみないと本当の意味でのスゴさはわからないし、それを相手に伝えることも難しいと思う。
ただ、「裸足=スゴイ」という図式はおそらくほとんどの裸足ランナーは思ってなくて、それぞれが何かの哲学やアイデンティティーを持って走ってるんだと思います。僕の場合、まだうまく言えないけど、しなやかに力強く走りたい、そう思って取り組んでいます。本大会、裸足で参加することであらためてそう思いました。
▲心も脚も折ってしまえとばかりのダメ押し坂。
というわけで、ここまでなんとかペースを保って来た僕の裸足ランですが、ついにこのあたりから失速してきます。足裏は大丈夫だったけど、股関節のあたりが動かない。間違いない100%疲労です。スペックの限界、そういう感じでした。15キロあたりで一度歩きを入れて仕切り直して、あと少しと言い聞かせながら足を前に出していきます。もう裸足とかそういう問題じゃない。
▲天ヶ瀬ダムまで戻って来た!あと5キロ!しかし、ここから失速…
宇治川沿いまでは良かったものの、ゴールがある太陽が丘まで続くラスト2キロの登り。ここで完全に力尽きました。ラップは8:00と8:57。もはや徒歩。なんでここでもっと気合いを出せなかったのか。なんでここからが勝負だと思えなかったのか。…前日に録画してる「神の領域を走る」を見とけば良かったと今更ながら思います。
▲嗚呼、やっとゴールが見える…そんな思いとは裏腹に競技場のトラックって足裏に気持ちいい!
▲裸足フィニッシュ!
結局、2年前の記録2時間4分13秒を約2分下回る2時間6分12秒でゴール。最後の最後に追い込めなかった弱さとその結果である記録更新ならず。これが今回の大会でとても悔しいところ。
だけど、初めて21キロを裸足で完走できたことは自分にとって大きな自信になったし、なにより目標に掲げていたことをクリアできた達成感はいい歳こいて言うことでもないけど、成長した実感があって嬉しく思ってます。
▲GARMINでの計測結果。18キロ以降、特に最後の登り2キロがひどい(笑)
宇治川マラソン…もう走ることもあるまいと思ってたけど…近いし安いしまたいつか挑戦します。茶団子、食ったるでー!